南酒造場

みなみしゅぞうじょう

高知県安芸郡安田町安田1875

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり

高知県のほぼ最西端、南は雄大な太平洋に面し、北は魚梁瀬美林を背に、側に蛍や鮎が踊る清流安田川が流れる自然に恵まれた環境で土佐酒を醸す南酒造場。歌にも詠まれている通り、尽きることのない玉のような水が井戸に湧き出ることから名付けられた「玉の井」は地元限定で流通しています。

高知県と聞けば大酒飲みを連想する通り、献杯に代表される酒文化は土地に根ざし、県オリジナルの酒米や酵母開発にも力を入れています。地元でのシェアは依然土佐鶴や司牡丹などの大手蔵の普通酒が占めますが、南酒造が県外に向けて銘打った「南」は関東や関西では高知県の酒の中でも大変人気が高く、新酒の時期だけに流通する無濾過生酒バージョンは手にしたくても春には売り切れてしまいます。

The 土佐酒

香りは控えめで、淡麗な味わいの中にもパンチがあります。輪郭のハッキリした辛口でキレ良く、飲み飽きしない土佐酒。そしてなにより嬉しいのが、どれをとっても「価格を上回る質の良い酒」ばかりで、特に2,200円代の特別純米のクオリティは群を抜いています。

見学に寄せてもらった際「どんな料理が合いますか?」と質問すると、蔵元の南氏は自身が醸す酒を「酒を主役に考える居酒屋の酒」という潔さ。食中酒を目指すわけでもなく、少しのつまみをアテに杯を重ねるのが似合う男酒。流行を追わず、頑に地の淡麗辛口を醸し続ける姿勢が酒質にも表現されているように感じられます。