ジャン・ブスケ

Domaine Jean Bousquet

オーナーのジャン・ブスケは1948年に南フランスのカルカッソンヌで生まれました。ワイン農家の3代目の彼は、その後、20年にわたる努力の結果、立派な葡萄園へと育てあげ、商業的にも成功をおさめました。しかし、彼はさらに優れた品質を追い求めるうち、理想の土地を探すため世界中のワイン産地を旅して回るようになり、アルゼンチンのメンドーサのトゥプンガトの葡萄畑と出会ったのです。当時、標高350m程のメンドーサにはすでに葡萄畑はありましたが、標高1,200mのトゥプンガトには葡萄の樹など1本もなく、ましてワイナリーなどありませんでした。「アルゼンチンに行くと言ったら、フランスではあんな国に行くなんてとバカにされ、アルゼンチンに来たら、アルゼンチンの人からもなぜこんな何もない場所でワイン造りをするんだ?フランスの地を捨ててまでとバカにされました。ところが、始めはクレイジーだと言っていた人々が、今では真似しています」。1997年、何一つない土地を買い、トゥプンガトの地に翌年から葡萄を植えていきました。何もない土地に葡萄を植えるのですから、ワインができるまでには時間がかかりました。植えてすぐワインができる葡萄が収穫できるわけもなく、お金を作るために、苗木を販売する仕事をしたり土地を売ったりしていました。「5年目で初めて収穫できた時は、嬉しくて泣いてしまいました」。

畑は、トゥプンガトに100haとマイプに75haを所有しています。それ以外に生産量の30%程の買い葡萄をしています。マイプの葡萄や買い葡萄は、カメレオンやスタンダードクラスに用いています。醸造は、トゥプンガトで行っています。畑の奥にはアンデス山脈が連なっています。この環境により、葡萄の摘み取りの時期は地上より遅くゆっくりと熟し、糖分だけでなく「旨み」となる様々な成分(酸、ミネラル等)が豊富に含まれていきます。気温の高い場所で同じように摘み取りを遅くすると、葡萄は過熟気味になってしまいバランスを失います。標高の高い畑だからこそ生み出せるスタイル、それはエレガントでしなやかな奥深い味わいのワインです。彼が土地を選ぶにあたって、3つの必須条件がありました。

  1. 未開墾の土地で空気のきれいな場所であること。
  2. 水はけのよい砂と砂利の土壌であること。

海抜1,000から1,200メートルの場所であること(カビの発生を防ぎ、十分なタンニンを得るため)。
涼しい場所と風のある畑では葡萄果の腐敗はなく、カビの発生もほとんどありません。従って、全く農薬の必要性がないのです。このことは、彼がフランスからアルゼンチンにワイナリーを移す決め手となった決定的な要因となりました。さらに、さまざまな土着品種のテイスティング、降雨量や土壌の調査を行った結果、そこは正に彼が確信する理想の土地でした。彼は、1997年にこの新天地でワイン造りをスタートさせました。

葡萄の苗は、マルベック以外はフランスから持ってきたものです。マルベックだけはアルゼンチンの苗の方が優れていたからです。当初、涼しいトゥプンガトにはピノ・ノワールとシャルドネに適していると考えていたそうですが、植えてみたらカベルネ
ソーヴィニヨンもマルベックも素晴らしい葡萄が収穫出来ました。チーフワインメーカーは、アルゼンチン生まれのレオナルド
ボルシで、彼はシャトーヌフ・デュ・パプのトップ生産者ヴュー・テレグラフで12年間働いていました。'10年の3月から加わり、'09年のブレンドから携わっています。ブレンドは全て葡萄の段階で行います。ワインになってからブレンドするよりも、よりそれぞれの葡萄の個性が調和し、味に一体感が感じられます。赤のマセラシオンは、4つの方法で行っていて(コンクリートタンク&ポンピング・オーバー、400Lの樽を回転させる、大樽で手とポンプを使用、手作業によるピジャージュ)、後でブレンドします。ピジャージュの際、枝をまとめたフィルターを使います。枝には天然の酵母がたくさん付着しており、それが味に深みをもたらします。

彼らのワイン造りは、飽きることなくベストな醸造法を試し続けています。そのワインの品質は明らかに現在進行形で向上してきています。今年からレオナルドだけでなく、ブリュッセルに住んでいた娘夫婦もトゥプンガトに移り住み、営業や事務も充実されてきました。また、現在セラーを一部増築したり、マイプにセラーを借りたりしながら、目標に近づきつつあります。彼らのワインが今後より一層、高まっていく品質のポテンシャルをしっかり感じることができます。