板倉酒造 無窮天穏 水母 そやし水酛 純米吟醸

Itakurashuzo Mukyutenon Kurage Soyashimizumoto Junmaiginjo

山陰吟醸造り、それは人間が積み重ねてきた酒造り。そやし水もと、それは水の中での自然の営みに任せる酒造り。人間醸造と自然醸造の極地に近しいこの2つの概念を、私の手によって意図的に衝突させる。するとそこには人間であり、自然であり、どちらでもなく、どちらでもあるという人と自然を内包した新たな存在が誕生します。
異なる2つの概念を衝突させて意図的に矛盾をつくり、そこに縁(エン)を起こして新たな存在を産み出すいう手法は、意図的に奇跡(神)を起こすための儀礼、すなわち縁起(えんぎ)として、古代の人々に利用され、文化風習として現代に残されてきました(詳しくは秋にリリース予定の無窮天穏 縁起の際に)。
杜氏初年度の27BYで、山陰吟醸造りと生もと造りをかけ合わせ、御神酒を造ろうとした頃から7年が経ち、山陰吟醸はより高度に、生もとはよりアナロジーを増したそやし水もととなり、人間醸造、自然醸造それぞれの概念は深まっていきました。
1つの概念を追求すると反対の概念が生まれ矛盾が生じる。その矛盾を埋める縁が2つの概念の共生方法を産み出してくれる。男×女+縁=子供、人×自然+縁=神、空×大地+縁(雷)=生命、この世×あの世=妖怪、縄文人×渡来人+縁=日本人などなど二元論から三元論へ移行する儀礼は数多くあってどれも感動的です。
そこで山陰吟醸とそやし水もと。この深く大きくなった相反する概念をムスんで縁を起こすとどうなるか。そこには大きな感動があるのではないか。思想を現実にすることが醸造家の本質かもしれない。
無窮天穏 水母(くらげ)は「御神酒」「営み」に続く、新たなキーワード「縁起」によって造られた新たな酒です。いまここに誕生した縁起的醸造法の新酒です。出雲の蔵、御神酒を造る出雲杜氏が縁起的醸造法でムスビ(産霊)と縁起による本当の意味での縁結びを行うことは、なかなか理にかなっていて良い気がします。
縁起的醸造法のゴールは、どちらでもあり、どちらでもない。なにもないのに、どれでもある。それは人類が求めてやまない悠久の詩になる可能性を秘めた酒だと思います。水母はそんなすべての物事に境界線のない世界をイメージして命名とラベル意匠をしました。
-- 杜氏コメント

板倉酒造

銘醸 『天穏』 の蔵元、板倉酒造は1871年(明治4年)の創業。板倉家九代佐次郎が酒造りをはじめ、現在の当主十四代板倉啓治は酒造り六代目。
天穏という酒名には 蔵元の宗門である日蓮宗本山要法寺管主だった 当塩冶出身の坂本御前により大正五年に命名されました。仏典にある 『無窮天穏』 という言葉から名づけられたという由来があります。 天穏の特色は“味と香り”。出雲地方においては”よその酒とは一味違うよさがある”と当時より好評をいただいていたようです。
一貫した技と水と原料米への徹底したこだわり。酒米には豊かな自然に恵まれた島根県産の酒造好適米 山田錦、改良雄町、佐香錦、五百万石とともに兵庫県産山田錦米を自家精米で磨き上げ、仕込水は出雲の北山々系、 鳶巣本陣の伏流水で中硬水を使用し、元気のいい発酵を特色としています。

天穏は全国新酒鑑評会で通算九回の金賞を受賞し、また広島国税局の中国五県の鑑評会では春と秋の四回優等賞を得ています。当地出雲は出雲風土記にもありますように、酒造りの発祥の地として佐香神社もあり、出雲を代表する銘酒として多くの人に親しまれています。